文責 心理学博士 松嶋 公雄
「学問が無力であってはいけない」 という教育者としての信念のもとに、心理学の研究と実践を進めています。
(2006,12,30)
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日本学校カウンセリング学会会報 第19号掲載 2005年11月23日発行
実践報告論文 医師から「パニック障害」(心身症)と診断された成人女性への対応 〔短期改善事例〕
日本学校カウンセリング学会2000年総会で、大前泰彦氏が発表された「BRIMS」をブリーフセラピーとして研究し実践しましたところ、大人のパニック障害に顕著な改善が見られましたので、報告いたします。
【30代 女性、Aさんの場合】
一度25歳のときに結婚したが、やることなすこと姑から否定され、夫も新妻をかばう姿勢がなかったことから、結婚生活がうまくいかなくなり、27歳のときに離婚した。
その後、Aさんは精神的に不安定になり、大勢の中に入れなくなったり、スーパーのレジが通れなくなるなど、生活に支障をきたすようになった。
精神科医からは、「パニック障害」と診断され、カウンセリングや薬物療法を受けたが、あまり効果がなく10年近くも苦しんでいた。
【主訴】
ドキドキして不安になり一人でいることができず気分が悪くなる。肩から背中にかけてカチカチになり、手足が震え冷や汗が出る。恐怖感もあり、あまりひどいと過呼吸になる。以前から、肩こり・腰痛がある。
また、一人でバスに乗れず、スーパーのレジを通れないし、車の運転ができなくなった
1回目のカウンセリング
平成X+6年8月下旬、ある市社会福祉協議会主催の講演会で、ストレス解消法として「イメージ呼吸法 BRIMS」を紹介したところ、その講演会に参加していたAさんが、「とても気持ちが楽になった。」ということで、1回目の相談を受ける。
2回目のカウンセリング
9月中旬、母と二人で我が家を訪ねてくる。
主訴は、上記で述べたが、最終的には、「一人でC市まで行って友達に会ったり、D市にいる弟のところへも行ったりしたい。」と言う。
話の全体から大きなストレスが彼女の症状を生んでいるように思われた。そこで、「イメージ呼吸法 BRIMS」で、身体をリラクセーションに導き、そこから心のリラクセーションを体感させた。イメージが浮かび易くなったことを、本人から確認し、バスに一人で乗れるイメージトレーニングと、そのバス停近くにあるスーパーで買い物をし、レジを通るイメージトレーニングを、本人の自信がつくまで数回行った。
臨床動作法で、肩こり・腰痛も軽減して、このときは、終了する。
3回目のカウンセリング
9月下旬、母と二人で我が家に来る。
前回からの経過を聞くと、「『呼吸法』をしてスッキリした。イメージトレーニングをした後に、本当に出来るような気がした」とのことであった。
実際、その後スーパーのレジを通ったら、全く大丈夫であったということだし、バスにも母と一緒に乗ったが何事もなく、無事行き帰りができた。さらに、その3日後には、一人でバスに往復乗ることができたということであった。また、最近は体調も良くなり、母とならたくさんの人ごみの中にも入っていけるようになったという。
今回のカウンセリングではどんなことを解決したいかを聞くと、「結婚前のように、車の運転ができるようになりたい。」という。
過去2回の「イメージ呼吸法 BRIMS」の体験によって、彼女との信頼関係も十分と感じられたので、今回は足の指先から順々に体全体を脱力させて、心身をリラクセーションに導いた。
「イメージ呼吸法 BRIMS」では、イメージをありありと浮かばせるのに要する時間は20分程度だが、この方法では5〜6分で、その状態にもっていけた。
そして、イメージの中で結婚前に楽しく自由自在に車を運転していたときを、まず思い出させたあと、彼女の現在の生活の中の身近な公道を、イメージの中で運転させてみた。様々な運転箇所での危険を避けるためのアドバイスをしながら、イメ−ジの中で安全に運転をさせ、本人が自動車の運転に自信がついたと言ったところで、イメージトレーニングを終了した。
臨床動作法も本人が希望したので、心体のリラクセーションをねらって行った。
4回目のカウンセリング
10月下旬、母と来訪してきた。
前回 自動車運転のイメージトレーニングをしていたとき、「『あっ、運転しているときの姿勢は、こうだったんだ。』と思い出し自信が付き、実際に昔と同じように自動車の運転が出来た。」と言った。ただ、「赤信号に出合うとまだドキドキするし、車が多いところは、運転できない」ということであった。
今回は、「自律訓練法」とその効果について説明し、身体感覚公式0(背景公式)から、公式6(額部冷感公式)までを、足の指先からの脱力から、体全体のリラクセーションに導き、「自律訓練法」の公式0から6までを実感してもらった。
この中で、結婚前の楽しかったことを沢山思い出させ、イメージの中で、自分も周囲の人も幸せにできる実現可能なことを考えてもらった。
Aさんは、三つ思いつくことができた。
「自律訓練法」の中で、このような楽しいイメージの世界を体験できること、実現可能で人の役に立ち自分も楽しいことができることに気づけば、日々の生活が今までの暗いものから、明るく希望に満ちたものに変わるということを体験してもらい「自律訓練法」への意欲付けをした。
帰りがけに臨床動作法をしてあげると、「体が楽になり、生き返ったようだ」と言って、喜んで帰っていった。
5回目のカウンセリング
11月中旬に、母と来訪する。
「バイパス以外なら、一人で自動車を運転できるようになった」とAさんは言う。
今回からは、自分で自分の心身のコントロールができるよう、「自律訓練法」の0から6までの公式を示し、今まで私がAさんに体験させた「呼吸法」や「身体の弛緩法」を思い出させながら、「自律訓練法」の0から6までの身体感覚を自分自身の意識集中の努力によって感じられるよう援助し、自宅での「自律訓練法」の実践を勧めた。
12月現在
Aさんは「パニック障害」から、まだ完全に回復したとはいえないものの、1回目のカウンセリング時とは別人のように血色も良くなり元気な生活をしている。
本人に言わせると、「以前の元気な生活に戻るのは、もう時間の問題だけである」という。
最終的には、Aさんが現在獲得しつつある「自律訓練法」によって、自分が望む心身のコントロールが自分自身で出来るようになり、以前より充実した生活が出来ることを目指して支援してゆく。
そうなるまで、今後も側面的に心理支援をしていく予定である。
【40代 女性、Bさんの場合】
平成X+3年1月ころ、東京で働いていた息子さんは、友達からいい仕事があると言われて実入りのいい仕事に変わった。しかし、その友達は実は「暴力団員」で、自分の組をつくり息子さんを仲間に入れようと考えていたことが分かった。その後、息子さんをその友人関係から抜け出させるために多大なエネルギーを費やすことになり、さらにその時期には、ご主人や祖父の入院が重なった。
平成X+4年3月ごろ、お風呂に入っていたら全く息ができなくなり、バスタオル姿で玄関まで出てきたところで気絶して倒れ、救急車で病院に運ばれた。それからは一人でお風呂に入れなくなったり、スーパーのレジが通れなくなったりした。
平成X+5年5月ごろから、ドキドキ感が増し、息がしづらくなり手足の振るえが出てきたので病院に行き注射をしてもらって治まった。総合病院の心療内科で「パニック障害」と診断され、医師からは「精神的なもの、薬とうまく付き合って気長にし、大丈夫と思いなさい」といわれていた。
【主訴】
一人でお風呂に入ることができない。スーパーのレジを通ることができない。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
洗濯だけは何とかできるが、そのほかの食事の準備や掃除などはできず、昨年(平成16年)の夏以降、一日中寝ている状態であった。 一人でいるときに不安になり、ドキドキすることがある。声もあまり出せなくなり、人と接する仕事などが出来なくなった。
魚などの骨が、のどの入り口のところに横に刺さって、のどが詰まっているような感じがして、あまり食べられない。このような感じがする日は、一日中気分が悪い。
車の運転も昨年5月から出来なくなった。
1回目のカウンセリング
平成X+7年1月下旬、私の友人からパニック障害の知人がいるので、相談に乗ってもらえないかとの連絡があり、受諾する。ご主人の車で来訪される。
居間へ招いたが、歩いてくるというより転がり込むというような様子で、表情は暗く、思いは深刻なようであった。
現在の自分の心身の様子を相談票に書くのも大変なようで、わずかに自分の名前と電話番号と「不安が取れない」とだけ書いた。したがって、Bさんの症状は、私が詳しく聞かなければならなかった。
聞くと、「お風呂では圧迫感があってドキドキし、一人では入れない。」また、「スーパーのレジを通ろうとすると、急に過呼吸になり息苦しくなって心臓がドキドキし出して、通ることが出来なくなる」という。
そこで、まず、不安やストレスを軽減させる「呼吸法」を教え、次に「イメージ呼吸法 BRIMS」で心身のリラクセーションを体感させた。またこの中で、「一人でお風呂に入るイメージトレーニング」と、「スーパーのレジを通るイメージトレーニング」を本人の自信がつくまで、それぞれ数回繰り返した。
終了後に感想を聞くと、「いつもは、のどに引っ掛かりを感じていたが、楽になった。」「いつもは、目をつむると天井が回るような気がするが、今はなくて目覚めのときのような感じがする。」また、「いつもは一日中いろいろなことを考えているが、今は意識を集中していたためか他のことを考えなかった。」と言った。
臨床動作法も、本人の心身のリラクセーションをねらって、体験してもらった。Bさんは、笑顔を見せてご主人の車で帰宅した。
2回目のカウンセリング
2月中旬、ご主人の運転する車に乗って来訪された。
最近の様子を聞くと、@「一人でスーパーに行きレジを通れるようになった。」また、A「一人でお風呂に入れるようになったが、まだ頭を洗うときにはドキドキして早くお風呂から出たくなる。」とのことであった。
さらには、昨年(平成X+6年)の夏以降、B一日中寝ている状態であったこと、Cそれからは、洗濯だけは何とか出来たが、そのほかの食事の準備や掃除などは全然出来ないでいたこと、D一人でいるときには不安になり、ドキドキすることがあったこと、E声もあまり出せなくなり、人と接する仕事等が出来なくなっていたこと。F魚などの骨が、のどの入り口のところに横に刺さって、のどが詰まっているような感じがして、あまり食べられなかったこと、Gのどが詰まっているような感じがする日は、一日中気分が悪かったこと、H昨年5月まで出来た車の運転が出来なくなっていることなどを語ってくれた。
そして、前回のカウンセリング後は、上記の@〜Gまでについては、生活にほぼ支障がないまでになっていることを語った。
Bさんは、こんなにもたくさんの苦しみの中で生活していたのかと驚くとともに、1回目のカウンセリングのときには、心に余裕がなく自分の思いを十分に語り切れなかったのだなと思った。
「イメージ呼吸法 BRIMS」で心身をリラクセーションに導くとともに、その中でもう少し改善してあげたい「一人でお風呂に入るイメージトレーニング」と、「のどの詰まりを感じないで食事が出来るイメージトレーニング」を本人の自信がつくまで数回行った。
さらに、昨年5月からできなくなった運転が再び出来るように、イメージの中で自動車の運転を体験させた。Bさんは車を運転するイメージがありありと浮かんだようで、自宅から実家まで自分で車を運転し、親たちと楽しい会話をして自宅に車で戻るまでのイメージを、具体的に生き生きと私に語ってくれた。また、イメージトレーニングが終わった後には、「運転の自信がついた」と言った。
最後に臨床動作法で、心と体のリラクセーションをはかり、終了する。
Bさんは、「明日、雪が降らなければ車の運転をしてみたい」と言って帰って行った。
3回目のカウンセリング
2月下旬、ご主人の運転する車に乗って来訪する。
今日は、表情が明るく常に笑顔で話してくる。また、目が生き生きし着衣もこぎれいで、以前より美人に見える。最近の様子を聞くと、@「一人で入浴しても、ドキドキしなくなった。」、A「車も、普通に運転できるようになった。」、B「家事も面倒に思わなくなり、大体出来るようになった。」、C「誰に会っても普通に笑顔で話せるようになり、物を売る仕事が出来るようになった。」、D「体調が良くなったので薬を飲み忘れるが、一日に一回も薬を飲まなくても何ともない。」という。
「今は困ったことが何もなくなった。」というので、イメージトレーニングの必要もなくなり、「臨床動作法も今日はしなくてもいい。」というので、呼吸法と筋弛緩によるリラクセーションの復習をし、その応用である自律訓練法の体感記憶に少々長い時間を使った。
今後は、自宅で呼吸法や自律訓練法を行い、再び心理的な問題が生じたら当家を訪れるということで、カウンセリングを終了する。
この手法が、「不登校」などの心理改善に有効であることは言うまでもありません。
岐阜県飛騨市立河合小学校 松嶋 公雄
(岐阜教育会 教育ボランティア)
(編集付記:以上の事例に関しましては、AさんBさんから掲載の許諾をいただいています。)
以上 日本学校カウンセリング学会会報掲載 実践論文
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◇約1年後の、AさんとBさんの様子。
その後Aさんは順調に回復し、社会復帰が目前となっていました。
Bさんは、カウンセリング後に通常の社会復帰を果たし、薬は心配なので手放せないが、当方のカウンセリング以来、1度も薬を飲んだことはないとのことです。
「イメージ呼吸法BRIMS」は、兵庫教育大学の冨永良樹教授らの「イメージ呼吸法」と、ニューヨークの大学で心理療法を教えていたアローズが1996年に発表した「BRIMS」に、それまでに蓄積していた松嶋の臨床心理学の知識を加えて完成した独自の心理療法です。
「自律訓練法」は、専門家に指導していただいても、その習得に1〜3ヶ月かかるといわれます。
しかし、松嶋は最初のカウンセリング当日に「自律訓練法」の「公式6」近くまでを実際に体感していただく(約20分で体験)ので、クライアントは達成目標が明確になり、短期間に「自律訓練法」を習得することになります。
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下記の効果がある心理技法を駆使して改善しています。
1 リラクセーション
◇心身の健康を取り戻す。
・ 心の緊張は、身体をも緊張させ体内の血流を悪くし様々な疾病の原因となる。また、外見的にも、姿勢を悪くしたり、チックなどの症状を生じさせたりする。
・ リラクセーションは、体全体の血液の循環を良くし、酸素や栄養や免疫を全身に送ることが出来るようになるので、身体の健康を取り戻すとともに、心の健康をも取り戻させる。
◇心や体を活性化させる。
・ 沈んだ気持ちを吹き飛ばして、表情を明るくし元気を取り戻させる。
2 ラポールの確立
◇相談者の心をリラクセーションさせて緊張から解くことにより、相談者にカウンセラーへの強い信頼感とカウンセリングに対する受動的姿勢(従う姿勢)を生じさせる。
・ カウンセラーの「受容と共感」的姿勢によって相談者の生き方を変えるためには、相談者のカウンセラーに対する受動的姿勢(信頼感)が確立していてこそ効果を発揮する。
3 イメージを浮かべ易くする。
◇リラクセーションとラポールの確立は、相談者の様々な悩みや雑念を忘れさせ、カウンセラーが心理改善に必要と考えるイメージをありありと現出させ易くする。
4 意識の改善
◇イメージが浮かびやすくなった状態での相手に従おうとする受動的姿勢は、カウンセラーが行うイメージトレーニングを容易にすると共に、心理改善の効果を上げる。
上記 心理技法の教育への応用例
1 リラクセーション
◇ストレスや不安の解消・軽減
・ 非行や、加害者となる事件(兵庫・サカキバラ セイト事件など)の防止
2 ラポール
◇強い相互信頼感の確立
・ 教師が児童生徒に信頼され、児童生徒が教師のことばに耳を傾けようとする姿勢を生じさせることは、教育効果を上げるために必要なことである。
3 イメージトレーニング
◇スポーツなどの技術向上
*スキー、体操、フィギアスケートなど、スポーツ全般
◇上がりや、緊張の緩和
*入学試験での緊張や上がりの防止
◇心理的な不安や不適応から生ずる身体症状の緩和や解決
*腹痛・頭痛〈不登校〉
*車酔いの防止
4 心理改善
◇苦手意識の改善
*不得意教科の克服(学力の向上)
*食べ物の好き嫌いをなくす など
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◆◆ あなたも社会貢献してみませんか。 ◆◆
人々が心理療法家に期待していることを効果的に実現できているのは、「治療的カウンセリング」に関する先進的な学会に加入し、そこで国際的にも活躍されている諸先生方から直接ご指導を賜る機会を得たことや、臨床心理学に関連する学会での発表・研修で自らを磨く機会に恵まれたためであり、様々な先達のご指導やご支援に、深く感謝しています。
一般の方には、国立乗鞍青年の家や岐阜県博物館・高山市社会福祉協議会等での講演、あるいは、全国組織の心理学会を企画運営するなどで私の活動を知っていただいていますが、更に広く知っていただき、人々の幸せにつなげていきたいので、様々な心理的対応方法について技法を知りたい方や、ストレスを解消し癒されたい方はご連絡ください。
携帯 090−7436−9497
心理学博士 松嶋 公雄 |